なんちゃって4駆??4WDフィット3の雪上実力。

 今回はフィット3ハイブリッドの4WDモデルを雪山で運転する機会を得た。フィット3の4WDは、従来のホンダ車が採用してきたデュアルポンプ式を改め、ビスカスカップリング式の4輪駆動を搭載している。

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 従来からホンダの4WDは、雪道での評価が非常に悪い。原因としては後輪へのトルク伝達のレスポンスが悪いことが挙げられる。しかし今回のシステムは従来型に比べ、レスポンスが大幅に高められ、深雪での発進性能は従来型より改善がされていた。踏み始め、コンマ数秒のタイムラグはあるが、すぐに後輪にトルクがかかり、更に後輪のトルク量が増大し、エンジン回転が上がり切ったところでフロントメインに戻る感じだ。バンパーに当たらない程度の雪では、発進の僅かなラグがネガティブな印象は与えることは少なかった。

 雪道での発進走破性能に関しては、FFヴェゼルより明らかに上である。また、アクセルオンでの安定性も非常に高い。ちなみに、比較対象としたFFヴェゼルは、大寒波が襲った2020年末に、夏油高原スキー場(全国2位の積雪量を誇る)まで問題なく走り抜けることができた。以上を踏まえるとバンパー上の積雪量でない限り、問題なく使える4WDだと言える。

 

 続いてコーナリング性能の話になるが、これには筆者も驚いた。FFベースの生活四駆として想像されるのは、アクセルオンでアンダーになる退屈なものだ。しかし、フィットの場合はアクセルオンでのリアのトルクが強く、尚且つレスポンスも良いため、ノーズがイン側にしっかり向きを変える。軽くテールスライド状態になるものの、スピン状態になる前にフロントにトルクがかかり、ゼロカウンタードリフト状態でコーナーをクリアすることができた。更にVSAを全解除し振り回してみたが、操作性が一定であり非常にコントロールしやすい。自由自在にテールを振り回せる他、コーナー進入から脱出までの車の動きがスムーズで乗りやすい。上記の要因として考えるのは2つである。一つは前後重量配分の良さだ。後輪にドライブシャフトなどを設ける事により、FFモデルより重心が後退し、コーナー進入時のアンダーが少ない。しかし、基本的にフロントの方が重いためコーナリング中に大きくテールが勝手に流れることなく立て直しもしやすい。

 2つ目の要因は、前後トルク配分の変化が非常にスムーズであることも大きい要因の一つだ。コーナリング中のアクセルオンで、後輪トルクが強くなり、その後フロントトルクが強くなるが、その変化がスムーズなため、唐突なアンダーやオーバーがでない。

 今回あまり期待していなかったモデルであるが、想像以上に良くできており、雪道を安全に楽しく走ることが出来る車であった。生活4WD車として高く評価できる車であったが、今回フィット3そのものの基本性能の高さ、シャシーの出来の良さも感じることができた。慣れるまで癖を感じるハイブリッドなど、ネガティブな部分も僅かにあったが、1.5Lとは思えない加速や燃費など、4WDグレードに限らずお勧めできる一台だ。